プロローグ――資料室にて

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 武器の密売、強盗、暗殺など、あらゆる犯罪を取り扱う巨大組織――ナイツは、日本全国にその支部を持っている。夕桜(ゆざくら)市にもその一つである、夕桜支社が存在した。一見平凡なオフィスビルの中に、そのアジトはある。  戌井冬吾(いぬいとうご)は現在、この夕桜支社のメンバーだ。元々は平凡な十九歳の大学生だったはずが、二ヶ月ほど前に、奇妙な巡り合わせから裏社会に足を踏み入れてしまったのだった。  冬吾のメンバーとしての役割は、夕桜支社専属の顧問探偵である禊屋(みそぎや)の助手兼護衛――すなわち、相棒役だ。ナイツ、あるいは外部からオファーを受け、様々な問題に対しその優れた頭脳をもって解決にあたるというのが、顧問探偵としての禊屋の仕事である。  基本的に、禊屋の探偵としての仕事は夕桜支社を経由して伝えられる。今日も冬吾はその呼び出しを受けて支社を訪れていたのだが、予定の時間より幾分早く到着してしまったために、一人、支社内の資料室で調べ物をして時間を潰していた。
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