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彼女を笑顔にする為に
彼女が待つ、部屋に早く帰りたい。
今日は、一緒に住み始めてから、初めての香織の誕生日。一緒にお祝いしようと約束をしていた。
予想外で、仕事で遅くなってしまい、慌てて、駅前のパティスリーで、彼女の好きなケーキを買い、彼は家路を急ぐ。
「怒ってるだろうなぁ」
マンションに帰ると香織が、ソファーでクッションを抱きしめながら待っていた。
「ただいま。ごめん、仕事押しちゃって」
「仕方がないよ。仕事だもの」
そう言っている表情は、やっぱり拗ねていた。
彼は香織のそばに行き、隣に座った。
「誕生日、おめでとう」
そう言って、香織を引き寄せ、頭にキスをした。
彼の行動が甘く、くすぐったい。
彼女は、少しだけ機嫌が治ったのか、上目遣いで笑顔を見せた。
しかし、すぐにその笑顔を曇らせてしまった。
すまなそうに彼が、
「ごめん。プレゼント買えなかった」
「えぇ?何で」
香織は、悲しそうに俯いてしまった。
「何がいいか悩んじゃって、ごめん。
誕生日のプレゼント何がいい?」
せっかくの誕生日。
彼からのプレゼントが、楽しみだった。待ちくたびれたのに、プレゼントも無しなんて酷すぎる。だけど、怒っても仕方がない。三十にもなって、聞き分けの悪い女と思われても嫌。
そう思っても、残念な気持ちを隠せなかった。
(少し、困らせてみよう)
香織は、悪戯っ子っぽく、口をツンと尖らせながら、
「じゃぁ、私の願いを叶えて」
「願い?」
何を言われるのだろう?何を言われても仕方がないだろう。今は、彼女の言うことを聞くしかない。
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