彼女を笑顔にする為に

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「今日は、俺が悪い。誕生日だし、精々、我がまま言って下さい。香織様」 彼は、低姿勢だった。 香織は、腕組みしながら、 「そうね、貴方が、魔法使いだったら、三十歳の私を五歳、若返らせて」 なんという、無理難題を言い始めたんだ。 彼が、首を振って、 「それ願い?そんなの叶えられない。それに、俺は、香織の笑った時に出来るシワ、好きだよ。だから無理」 困る彼の表情が、面白い。そして、優しい言葉が嬉しい。 でも、もう少し困らせてみたかった。 「じゃぁ、貴方が、王子様だったら 私を舞踏会に連れてって」 又、彼が首を振る。 困る彼を横目で見ながら、空かさず香織は、 「貴方が、パイロットになって、 私を無人島に連れてって」 又、彼が首を振る。 そして、笑みを浮かべながら彼が言う。 「俺は、魔法使いでも、王子でもない。今さらパイロットにもなれないよ。だったのサラリーマンだ。だから、香織の願いを叶えてあげられない。」  もっといっぱい困らせてみたかった。 ちょっと残念そうな香織。 それを見ながら彼が、 「だけど、一つだけ、あげられるものがある」 「何?どんなの?」 (よし、食いついた) 彼は、シメシメと思った。 香織の髪を指でクルクルと回しながら、 「明日、市役所にもらいに行ってくる。 それ、貰ってくれる?」 香織は、クスっと笑った。 「何それっ」 やっと笑った彼女に安堵した。 彼の顔が、急に真剣な表情に変わった。
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