彼女を笑顔にする為に

1/4
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

彼女を笑顔にする為に

 彼女が待つ、部屋に早く帰りたい。 今日は、一緒に住み始めてから、初めての香織の誕生日。一緒にお祝いしようと約束をしていた。 予想外で、仕事で遅くなってしまい、慌てて、駅前のパティスリーで、彼女の好きなケーキを買い、彼は家路を急ぐ。 「怒ってるだろうなぁ」 マンションに帰ると香織が、ソファーでクッションを抱きしめながら待っていた。 「ただいま。ごめん、仕事押しちゃって」 「仕方がないよ。仕事だもの」 そう言っている表情は、やっぱり拗ねていた。 彼は香織のそばに行き、隣に座った。 「誕生日、おめでとう」 そう言って、香織を引き寄せ、頭にキスをした。 彼の行動が甘く、くすぐったい。 彼女は、少しだけ機嫌が治ったのか、上目遣いで笑顔を見せた。 しかし、すぐにその笑顔を曇らせてしまった。 すまなそうに彼が、 「ごめん。プレゼント買えなかった」 「えぇ?何で」    香織は、悲しそうに俯いてしまった。 「何がいいか悩んじゃって、ごめん。 誕生日のプレゼント何がいい?」 せっかくの誕生日。 彼からのプレゼントが、楽しみだった。待ちくたびれたのに、プレゼントも無しなんて酷すぎる。だけど、怒っても仕方がない。三十にもなって、聞き分けの悪い女と思われても嫌。 そう思っても、残念な気持ちを隠せなかった。 (少し、困らせてみよう) 香織は、悪戯っ子っぽく、口をツンと尖らせながら、 「じゃぁ、私の願いを叶えて」 「願い?」 何を言われるのだろう?何を言われても仕方がないだろう。今は、彼女の言うことを聞くしかない。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!