第2章

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「ああ、篠田君?ちょっと待ってね」 あれから一週間。 外線を受ける羽鳥課長の声を聞きながらぼんやりと正面の席を眺める。 早帰りの金曜、大部屋はもうほとんど人はいない。当然、彼女も。 米州部は運悪くトラブルのために居残りで、現地のオフィスが朝を迎えるまで、今は食事休憩や雑務処理などの中休み時間だ。 「篠田君。電話」 羽鳥課長が意味ありげに声をひそめながら受話器を渡してくる。 「誰からですか?」 「おんなのこ」 そんなはずはない。 知佐からかかってくる訳ないし、合コンで名刺をばらまく真似もしていない。 『誰がオンナノコだ』 受話器の戸川の声を聞きながら呆れた視線を課長に向けると、満足気に笑っていた。 「久しぶりだな。奥さん元気?」 『ああ、順調ですよ。つわりも終わったみたいだし』 欧州部で現在ロンドン駐在の戸川は一年下の後輩だ。 態度がやたらにでかく、半分敬語、半分タメであまり後輩っぽくない。
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