第1章

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背中に大きなバッグを背負い片手に山刀を持った男が、下水道の中を歩いている。 1年半程前までは汚水が流れていた下水道は、汚水を流す者がいなくなり雨水の通り道としての役割しか果たしていない為、汚水の名残りが放つ悪臭を嗅がなければ地下道とかわりがない。 分岐点に差し掛かると立ち止まり、耳を澄まして目を凝らし周囲の気配を探る。 男は分岐点に差し掛かる度に同じ事を繰り返した。 最後の分岐点から暫く歩き階段を上がり、鍵の掛かったドアの前でまた周囲の気配を探り、何の音も無い事を確認してから鍵を開け中に入る。 ドアに鍵をかけ直して周りを見渡し、出かけた時と変わりが無い事を確認。 そこは天窓から光が差し込んでいる倉庫で、沢山の物で埋まっていた。 カーテンや木箱で仕切られた一角に足を進め、カーテンを開けて中に入り机の上に置かれている水槽の中の蜥蜴に声をかける。 「ただいま」 バッグをベッドの傍に放り出し中から、漁って来たビーフジャッキーの袋と水のペットボトルを取り出す。 水を水槽の中の水皿にいれ、餌皿にビーフジャッキーを小さく千切って入れた。
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