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「じゃあ、指輪買おう!!婚約指輪っ♪」
立ち上がって、私は部屋の真ん中で跳ねた。
「バーカ、婚約指輪って給料の3ヶ月分とかだろ?どこにあんだよそんな金」
呆れた様子で、敦志は私のベッドに深く座りなおした。
「そっか、…言われてみれば、そうだよね」
「じゃあ、下見♪今日は下見に行こう!!」
「下見って……お前…」
「いいから、いいから」
私は渋る敦志の手を引っ張った。
「今日はデートだね♪」
今朝起きたときはすごく暗い気分だったのが、もう、ウソみたいだ。
「………」
敦志も同じことを考えてるようだった。
「まあ、…しょうがねーな」
引っ張られていた敦志が、逆に私の肩に手を回してくる。
「……好き♪」
私は背伸びして、敦志にキスした。
「オレも好きだよ」
敦志はそう言って、キスを返してくれる。
いちゃいちゃしたまま完全に二人の世界に入った状態で部屋を出ると、廊下でいきなり母親と鉢合わせた。
その時の敦志の反応が、すごく可愛くて、やっぱり私は彼が大好き。
私に対して無愛想だった前の敦志、でも本当はあの頃からだって彼は何も変わっていなかったんだろう。
子どもの頃からの、あっちゃん。
今、目の前で恥ずかしそうに困った笑顔の彼。
私が手を伸ばすと、自分の背中に隠すようにギュっと握り返してくれる。
今、私を温かくしてくれる彼の全部、
全部がきっと奇跡で、だけど運命なんじゃないかなって。
敦志を見詰めながら、こっそり思った。
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