誕生パーティー

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アオイの父親はSF作家でアオイが7歳の時に4月戦争の核爆発に巻き込まれて死んでいた。大好きな父親だったが、その死は突然で、子供のアオイには何事が起きたのか分からなかった。ただ大好きな父親に、もう抱きしめられることはないのだと思うと、身体の真中に大きな空洞ができたような感じがした。 それから10年。身体にできた空洞には哀しみがいっぱい詰まっていて埋まらなかったが、時の経過と共に小さくなっているのも確実だった。時間と理屈が空洞を埋めているのだとアオイは考えていた。そのことで、自分を薄情者だと責めることもあった。 父親を失ったアオイは母親というより、祖父母に育てられた。母親は週の内4日は研究所に泊まり込むような仕事バカの人間で、たまに帰ってきたかと思うと死んだように眠り、翌日、アオイが気づいた時には仕事に出かけていて、いないことが多い。そんな母親が嫌いだった。
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