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 女主人はカウンター内のスツールに腰かけ、置いていた眼鏡をかけた。  赤い口紅に眼鏡姿はなんだか婀娜っぽい。吸うたばこもどこで売っているのか矢鱈に細い。 「店の名前は?」 「リベリュル。赤い看板にトンボの絵が描いてます。そのお店、深夜はバーになるんですけど、カウンターに座って店にないメニューを頼むと、帰るころには、店の裏にあるゴミ箱に入っているそうです、薬。それで、お代は飲み代として徴収するとか」 「警察が内偵進めればすぐ検挙できそうなもんだが」 「見縊られているのか人手不足なのか、あるいは袖の下、かしら」  ふんと鼻で笑って、恕有は立ち上がった。どれも正解だと思ったからだ。 「その薬はどれくらい危険なんだ?」 「使用量次第だそうで。疲れを取りたいならこのくらい、気分を揚げたいなりたいならこのくらいと。依存性も高いのでとても怖い薬だと聞いてます。噂だと、使用量を間違えてしまうと、脳が開く、とか」 「脳? どういう意味だ」 「さあそこまでは」     
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