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そして平々凡々な月日を過ごし、私は高校一年生となった。
正直言おう。中学三年の時点でなんかおかしいな、とは思ってた。進学先に、私の好きなゲームの舞台だった学校の名前がない。いくら探してもない。ごーぐる先生で検索しても一件たりともヒットしなかった。
だけどまあ、もしかしたら学校の名前が違うだけかもしれない。
そんな淡い期待はあっさりと破られた。
学校、入学式に行ってみたら全然違う。私が行く予定だった世界の校舎じゃない。式に出てもカラフルな頭は見つからないし挨拶をする生徒会長の頭の色も黄色じゃない。何とか職員室前で学年名簿を手に入れて見てみるも、私の知ってる攻略キャラクターの名前もヒロインの名前もない。桃宮も、赤霧も青柳も白樺もいない。
ここ、乙女ゲームの世界じゃないわ。
しかもすごすごとしながら一日を過ごしたら、なんか美女が多い。キャラが濃くて美人な女子生徒が多い。しかもそれ以外の生徒たちは男女ともに没個性的。そのうえなんか一人キラキラしい生徒がいる。
千賀谷李人。
イケメン。眼がつぶれそうなほどのイケメン。周囲の女子生徒たちは彼の笑顔一つでメロメロである。一瞬ギャルゲの主人公かとも思ったがギャルゲのヒーローこそ没個性的なのがテンプレだ。最初っからモテモテのぬるゲーなぞ、と思ったところでぶつくさ言ってた神を思い出す。
私のほかにもう一人異世界転生させた男子高校生がいた。
奴は謙虚だった。
巻き込まれて、おそらく神のうっかりで殺された男子高校生、神からは気に入られている。
あいつだ。巻き込まれた男子高校生は十中八九の千賀谷李人だ。好きなギャルゲの世界に行って神からチートを付けてもらった、というところであろう。
Q:ここは私の望んだ乙女ゲームの世界ですか?
A:いいえ、ここはギャルゲの世界です。
完全にあれだ。
「今度は私が巻き込まれてんのか……!」
私のうめき声は突っ伏した机に消えていった。
あの男子生徒は私に巻き込まれて死んだ。
そして私はあの男子生徒に巻き込まれてギャルゲの世界に転生した。
思い出されるのは神のこと。
「わしドジっ子じゃから。」
「そおれ、いくぞい、ぶえっくしょい!」
ドジを遺憾なく発揮された模様。
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