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子供の頃の記憶というものは案外、大人になっても色濃く残っているものだ。
あの日からは長い歳月を過ごしてきたが、未だに君との約束を忘れることはない。思い返せばまるで昨日の出来事のように、思い出という思い出が、鮮明に蘇るのだ。
「………」
そして今年も、昨年と同様に祖母の住む小さな村へと帰ってきた。お盆休みを利用しての帰省である。
祖母は元気だろうか。
ご飯でも振る舞ってやろうか。
それから、家の掃除もしてやって。
なんて、そんなことを考えながら、僕は手に持った土産袋を持ち直した。
真昼のからっとした暑さに額から一筋の汗を流しつつ、僕は人気も少なく、お店もないような道をただ歩き続けた。
車一つ通らない。
蝉の声が、やけに煩く鼓膜に響く。
(あちー…)
いくら周囲に木々が生えていようと、この暑さでは大した日よけにもならなかった。
照り付ける太陽に目を細めながら、僕は祖母の家を目指して歩みを進める。
今日も、いつもと何ら変わりのない真夏日である──
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