序章

3/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
 罪を悔いての投身――などではもちろんない。ピーマンの跳んだ先、闇夜のほかに何もないはずの中空に、見たこともないネギの化物が浮遊しているではないか。有りえないほどに太く、そして長いその体躯は、まるで神話にあらわれる龍のごときだ。 その背にあたる部分に、キャーロット姫が横たわっていた。大王と同じように拘束され、動かないところを見ると気を失っているのだろう。 「ハーッハッハ! ついに姫を我が手中におさめたり! 我らがこの国に革命を起こすのだ!」 「やめろ、ピーマン大臣! この国の平和を乱すならば、このトーガンが許さぬ!」  龍の背に飛び乗り、勝鬨の声を上げるピーマン。大王も負けじと、力の限り叫んだ。  だが。 「フン。我はもはやこの国の大臣にあらず」 「何だと――!」 「我が名は魔王ピーマン! 新たなる国の王であり、世界を覆すものなり!」  ピーマンは自らを魔王と称し、いまだ明けぬ空の果てに消えた。大王の部下だったはずのパプリカと、そして、キャーロット姫とともに。  大臣の謀反――この夜の事件は朝の訪れと同時に国中に知れ渡ることとなり、ここより再び混乱の時代が幕を開けたのである。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!