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罪を悔いての投身――などではもちろんない。ピーマンの跳んだ先、闇夜のほかに何もないはずの中空に、見たこともないネギの化物が浮遊しているではないか。有りえないほどに太く、そして長いその体躯は、まるで神話にあらわれる龍のごときだ。
その背にあたる部分に、キャーロット姫が横たわっていた。大王と同じように拘束され、動かないところを見ると気を失っているのだろう。
「ハーッハッハ! ついに姫を我が手中におさめたり! 我らがこの国に革命を起こすのだ!」
「やめろ、ピーマン大臣! この国の平和を乱すならば、このトーガンが許さぬ!」
龍の背に飛び乗り、勝鬨の声を上げるピーマン。大王も負けじと、力の限り叫んだ。
だが。
「フン。我はもはやこの国の大臣にあらず」
「何だと――!」
「我が名は魔王ピーマン! 新たなる国の王であり、世界を覆すものなり!」
ピーマンは自らを魔王と称し、いまだ明けぬ空の果てに消えた。大王の部下だったはずのパプリカと、そして、キャーロット姫とともに。
大臣の謀反――この夜の事件は朝の訪れと同時に国中に知れ渡ることとなり、ここより再び混乱の時代が幕を開けたのである。
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