第二章 未来のゆくえ

17/17
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
「そうだ、僕たちには新天地があるじゃないか! ピーマンを倒し、閉ざされた道を再び開けばまた」 「呆れた。まだそんな幻想を信じてるのか」  誰もが帰りたがらない、野菜にとっての理想郷――キャベツが拾い出した答えを、アカリはあっさり否定した。 「新天地なんてものはない。列車が向かう先はただの地獄さ。アタシたちは冷たい籠に載せられ、『出荷』されてただけなんだ。誰も帰ってこない? 当然さ。皆、食われちまったんだから」  キャベツは頭を強く殴られたような、不気味な衝撃に襲われた。勇者も新天地も、己が命まで、希望と信じていたものは幻想でしかなかったというのか。 「この町はね。墓標なんだよ。『新天地』とやらに投げ出される野菜たちが、こっち側で最期のひとときを過ごすための。ありったけの贅を尽くした、世界一豪華な墓なんだ」  ピーマンが道を閉ざしたのは、食われに向かう野菜たちを救うため。町の年寄りは、かつて『出荷』されそうになった野菜のなれの果て。  そこからは、誰も喋ろうとしなかった。受け入れがたい現実が三人ともにのしかかる。 「……行けよ」  ジャガイモはアカリの剣を拾い上げ、彼女の拘束を解いた。 「――どこへ行こうが、アタシら野菜に希望なんて、ないんだ」  アカリはほつりと呟いて、廊下の闇へと姿を消した。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!