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「郁美君、音楽担当の花嶋さん連れて来たよ」
郁美の前に懐かしい花嶋が立っていた。
高校生の頃、いつもライブ活動していたギター担当の大学生でイカツイ割にオネエな花嶋だった。
大学卒業後にプロのアレンジャーになり録音取りのミキシングをしていた。
彼は未だ趣味でライブ活動をしていた。
「ハナさん、久しぶりだ。元気だった」
郁美はハナと抱き合った。
「1年以上ご無沙汰だったね~。郁美は死んだのかと思った~」
相変わらず、ハナの話し方は語尾が伸びる。
「やっと、曲が出来たんだって~。前のはイマイチでお蔵入りしちゃったからね~」
「はっきり言うね。心臓に悪いや」
郁美は頭を掻いた。
「今回のは凄く良いから、出来たら動画をアップしよう。その前にPV撮りもするから、一週間缶詰ね」
蒲田の言葉に郁美は驚いた。
「そんな話は聞いてないよ」
「今、一気に行くよ。ちょうど売れてるバンドが夏休みに向けてツアーだろ。今がCDを出す穴場なんだ」
蒲田の口調に郁美の顔が蒼ざめる。
一度失敗しているだけに蒲田の意気込み違う。
「サポートメンバーも決まってるから、レコーディングが終了したら会ってよ」
「そこまで決まってるの?」
「うん、PV撮りも有るからね」
「マジかっ!」
郁美はハナを見た。
「この人、入れちゃダメ?」
蒲田の前にハナを突き出した。
「えっ!」
蒲田とハナは同時に驚いた。
「やる気ある?花嶋君」
「俺?」
郁美が懇願した目を向ける。
「今更、遊び程度ですよ~弾いてるの」
「ハナさんは俺より上手いの知ってんだから。お願いします」
郁美はハナの前で手を合わせた。
「しょうがねえな。少しの間だけだぞ」
郁美はハナに抱きついて喜んだ。
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