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皐月の肩に詠月が触れたのを感じた時、既に互いの唇は重なっていて、皐月は全身の血が一瞬にして沸騰するような感覚に襲われた。同時に、体にある何もかもが、温度を上げて熱くなる。
それは詠月も同じだったようで、触れた時は優しかったキスもあっという間に深く、激しいものに変わった。
息がうまく出来なくて慌てる皐月を気に留めることなく詠月はひたすらに唇を追う。
「待って……苦し……」
待って欲しいのに、続けて欲しい──。
離して欲しいのに、抱いて欲しい──。
自分のままならない感情に頭と体を無茶苦茶にされながら、皐月は悲しくもないのに涙が勝手に溢れた。詠月がそれに気付いて心配そうに覗き込むが、皐月は抱きついて、何でもないと必死に伝えた。
「ねえ、詠月さん……俺はおかしい? 俺、詠月さんが好きになった……会ったばかりなのに……この気持ちは勘違い……?」
「僕だっておかしいよ……君のこと苦手だと思ってたのに……最初から全部作戦だったの? 僕の今までの価値観は一体何だったんだ……」
詠月がなんとか理性的になって考えようとしているのに皐月は、詠月のはだけたシャツから覗く素肌に何度も頬を擦り付けてくる。
「詠月さん、俺……、詠月さんの赤ちゃん……欲しい」
「あ! 赤ちゃんッ!!」
見目麗しい詠月から、何かとても大事な部品が外れ落ちる音が聞こえたような気が皐月にはした。
★END★
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