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男の溜息 ~何がだよ~
昼食を終え、同期の小沢と屋上で一服。
最近は、喫煙者は肩身が狭い。
今や会社で喫煙できるのも、この場所だけになった。
勤労、二十年。
四十も過ぎ、お互い白髪が、ちらほら見えるようになってきた。
小沢とは、良きライバルというか、社畜な戦友。
まぁ、コミュニケーション不足の今の若者には、分かるまい。
今日も二人、屋上の柵に寄りかかりながら、広がる景色を眺める。
そして、ゆっくりと紫煙をくゆらす、はずだった。
こんな話さえ、無かったら。
小沢
「なあ、お前は嫁に欲情出来るか?」
俺
「はぁ?何だよ、薮から棒に」
小沢
「俺さぁ、最近、とんと駄目なんだよ」
俺
「何がだよ。」
小沢
「ナニが、だよ」
俺
「あっ、ああ。…ナニがねぇ」
小沢
「ああ」
俺
「ナニが何かぁ」
小沢
「そうだよ、ナニが何なんだよ。お前は、どうよ?」
俺
「ん~、どうなんかねぇ」
小沢
「嫁に色気を求めても、今更なぁ」
俺
「今更?嫁に色気か……、ないか」
小沢
「だろう?」
俺
「いや、あれだろう。うちのだって女だし、その気になれば、色気ぐらい出るだろ?」
小沢
「そうかぁ?」
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