十一話

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天城院金糸雀。 彼女の加虐気質は幼い頃より始まった。 元々の影響としては、何不自由の無い家柄や、唯我独尊の双子の兄の影響もあるだろうが、彼女は彼とはまた違う性質を持った。 金糸雀はものを壊すのが好きな少女になった。 積み木を自分で組み立て、そして壊す快感。庭園の隅にいる蟻を潰す楽しさ。買ってもらった人形はいつしか手足のないダルマのようになっていて、弱そうな召使いを見つけては玩具にしていた。 しかし、まだ幼い少女の身。 加減を知らない彼女は齢10歳にして、ついに人を殺してしまった。 死んだのはいつも拘束して弄んでいた召使いだった。 もちろん恐怖と罪悪感はあった。呼吸が荒く、そして苦しくなった。だが、それよりも強く疼く感情はあった。 悦楽。快楽。 溺れてしまうような淫らな快感。 怖い、辛い、それ以上に気持ちいい。 それが金糸雀という妖魔のオリジンである。 「……」 天城院金糸雀は自身の腹部に突き刺さる得物を見つめる。 毛むくじゃらで、それでいて不気味なほどに毒々しい、槍のようなもの。 体の感覚からするに、雑菌黴菌の巣窟だろう。さきほどから侵食されるような気持ち悪さがある。 「……萩野先輩、邪魔しないでくださる?」 天城院は粗雑に槍を掴み、それを取り除こうとする。 「やめとけ、そりゃあたしの菌類を加工したもんだ。下手に弄ると手もやられるぞ」 「あら?」 しかし、忠告など耳に通らず、槍を引き抜きた。 「ひゃ……!?」 当然のように血が溢れ、目の前にいたマキにも血が降りかかる。 しかし、天城院のほうは声すらあげない。 その槍をテキトーな場所に投げ飛ばし、パンパンと手を払う。 「大したことないのね、これ」 本来、その行為は相当の痛みを伴うものだ。 槍による刺傷の出血、萩野特製の菌類による手や傷口からの侵食。 普通なら傷口からの侵食だけでも、歯をまるごと抜かれるような痛みを伴うはずなのだ。 それらを踏まえた上で、天城院金糸雀は不敵に微笑んだ。 「先輩……この程度の攻撃、私にはかゆい程度ですわ♪♪」
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