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「なら、決まりだ。俺の方も使ってるトリートメントが残り少なくてね。」
翌日の予定が決まったところで、ミーシェの髪に触れていた手が離れていく…その際に彼女から小さく声が漏れた。
「どうしたの?もう少し撫でていて欲しかったり…した?」
「馬鹿か、君は…あんまり、女をからかうと後で痛い目を見るぞ。」
刺々しい態度ではあるものの、満更でもなかったのか口元が緩んでいる。それを釣られてリュオの口元も自然に緩む。
もう少し、もう少しだけ…この時間に甘んじていたい気もするが間も無く始業時の鐘が鳴るのを二人は知っている。
「さて、そろそろ時間だ…戻ろうか?」
そっと、ミーシェに向かって手を差し伸べるも…二人が学生でいられる時間は終わったようでその手は空を切る。
王国騎士団に所属している以上、王国領である学園内ではある程度の融通を利かす事が可能になる。
でも、それは反対に他生徒への模範となる行動を取らなければならず…学生としての自由は奪われる事でもあった。
そういった意味では、この戦闘は失敗だったと言える。目撃者がいなくとも、半壊した安全柵は誤魔化しようがない。
「あの安全柵…後で正直に話しておくんだぞ。ナイツフォルド団長。」
咎めるも様な口調で…だが、同時に年相応の少女が見せるような弾けるような笑顔でミーシェが述べる。
この笑顔が見られるのならば、安全柵の数本くらい安いものだ。大半の男子生徒はそう口を並べてそう言うだろう。
しかし、今のリュオはそんな気にはなれず…年相応の少年がするであろう表情を仮面のように貼り付けて返して見せた。
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