~prologue~

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荒れ果てた荒野。その随所に毒々しい色彩の沼が点在し、見覚えのある生物と見覚えのない生物が混在している。 そう、ここは王国南部の汚染地域付近。その末端から未開の生物が流れ、独自の生態系を築き上げている。 そんな悪路をものともせずに数十名の王国騎士達が進軍する。騎士達が纏うのは自然界に馴染むことのない真紅の鎧。 その特徴から該当するのは紅蓮騎士団。行軍の様子を無数にある高台の一つから二人の人影が覗き見ていた。 大きい方の人影は独特の顔料を塗りたくった大男。着ているものは獣皮の腰巻だけで頭が良いように見えない。 小さい方…そうはいっても成人男性ほどはあるのだが、紫縁の黒いローブで素性を包み隠しているので容姿は不明だ。 「情報は確かロウな?嘘だっタら貴様、タダじゃおかない…いいナ?」 大男が鬼のような形相で詰め寄るも、黒づくめの方は涼しい様子で躱して騎士団の行軍に意識を回す。 騎士団は湿地帯に足を踏み入れようとしていた。周囲の木々に紛れて蛮族たちが潜んでいることに気付かずに… それ故に蛮族達の奇襲は成功に至った。地力は騎士達の方が上ではあるが慣れない地形によって苦戦を強いられる。 更に決定的だったのは兵力。数十名の騎士達に対して100近くの蛮族達が黒い波となって呑みこもとする。 事前に準備していた獣油を用いた火矢も湿地帯では効果が薄く決定打に欠ける。戦線は徐々に後退していった。
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