あの日出会ったのは、異形だった

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「っ?!」 思わず息をのむ ばっと後ろやや上のほうを向けば、彼はいたずらっぽい笑顔で私を見ている すっと細められる瞳の奥に、これまた意地悪い何かが垣間見えた やばい 早々と仁との電話を終わらせたほうがよさそうだ 「仁?その、出かける準備しないとだから、その...」 『あぁ、悪い、そうだよな、その、俺が言いたいのは』 その先を聞こうと集中しようとするが、首に、キスされた 声も出せぬまま膝から力が抜けそうになる だけどロックさんにしっかりつかまれているから崩れ落ちることはない ゆっくりと誘導され、ベッドに座り込む羽目に 後ろに確かなぬくもりを感じた状態で 『...冬?』 流石に仁も違和感を感じたのだろう ヤバいからやめてください!! そういう視線を向けるのに、ロックさんは楽しそうだ ヤバい 今までにないほどのSっ気を感じる なんだこれ 急に属性転換しすぎでは?! 「あぁごめん、な、んでもなっ...で、で、え、っと、何?」 一定間隔で訪れる未だ慣れない感覚になんとか耐える 『あー...うん、その、言いたかったのは、その...今日はなんか嫌な感じがあるから...だから』 「冬」 名前を呼ばれる 低い、声で ぞわぞわと一気に体中に鳥肌が立つ 出そうになる声を必死に押し殺し、なんとかロックさんの腕から逃れようとしてみるがかなうわけない 『家に、居たほうがいいと思う』 ふわふわしだした思考に、何とも居心地悪げな仁の声が聞こえてくるがそれもあっという間に何かに飲まれていく 「大丈夫、だよ。その、すぐ帰ってくる、から」 『そっか、まぁ確かにロックさんがいるなら...取り合えず、その、気を付けて』 「う、うん、ありがとう、じゃぁ」 『うん、また』 耳からスマフォを離した瞬間、すっとそれがロックさんに取り上げられた そして画面を見た瞬間、小さく息を吐き出し、電話を切る 「仁さん、ですか」 「なんかその、今日は家にいたほうがいいって」 「...どうして?」 「嫌な感じがする、とかで...」 過激ないたずらはそう言った瞬間止まる 内心ほっとしつつ、何か考えるような彼の様子から不安になる どうしたんだろう ロックさんも、もしかして嫌な感じが 「私がいるのに不安ですか?」 あああああああああ違います違いますそういうんじゃないんですだからそのぞわぞわするところそんなその辞めていただきたいいいいいい!!
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