無理しなくていいんだよ

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 ふいに玄関のチャイムが鳴った。時計を見ると8時を回ったところだった。 「誰だろう?こんな時間に」  そう言いながら、親父が玄関に向かった。  ドアを開けた親父は何だか楽し気な声を出していた。 「浩介、隣の美緒(みお)ちゃんだぞ」  隣に住む美緒は浩介と同い年で、2人は幼稚園の頃からの腐れ縁だ。  浩介にくっついて俺も顔を出すと、美緒は赤いリボンを首に巻いた小さな子犬を抱えていた。 「浩ちゃん、お誕生日おめでとう」  そう言うと、美緒はその子犬を浩介に差し出した。 「ありがとう。だけど、美緒・・・これって・・・」  微かに震えた声で浩介はそう言うと、そっと手を伸ばして子犬を抱いた。 「あのね、おばちゃんが入院して少ししてから、うちのシェリが子犬を生んだでしょ?前にお見舞いに行った時におばちゃんがね、浩ちゃんが犬を飼いたがっているからって、浩ちゃんのお誕生日プレゼントに届けてほしいってお願いされていたの」  美緒はニコニコしながら話していたけど、浩介は今にも泣きそうな表情をしていた。 「僕・・・お母さんにだけ話していたんだ。美緒のところに子犬が生まれたから、貰えたらいいなって・・・」  だけど、浩介は美緒や隣の家族には言っていなかったのだろう。  「人に貰ってもらえるくらい大きくなったから、浩ちゃんのお誕生日に間に合ってよかった」  美緒も浩介とよく似たおっとりとした女の子で、穏やかな笑顔を見せた。
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