無理しなくていいんだよ

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 ハッとして浩介を見ると哀しそうに俺を見ていたけど、また穏やかな表情をした。 「いいんだよ、兄ちゃんは失敗して。だって、誕生日にお母さんがいなくてもいいなんて、僕は嫌だ」  浩介はそう言いながらも、俺が作った塩辛いオムライスを口へ運んだ。  ああ、そうだよな。母さんのケーキで母さんの料理が良かったって・・・そういうのを思い出して母さんを恋しがってもいいはずだった。浩介の気持ちを無理に封印するようなことをしてはいけないんだ。  俺はようやくそのことに気が付いた。  と同時に、本当は俺自身が封印しようとしていたのかもしれない、と思い知った。  母さんを思い出すと哀しくなるから、親父を支えて浩介を護って生きなくては、という想いから・・・母さんのいない寂しさを封印しようとしていたのかもしれない。  相変わらず、母さんが微笑んでいるような気がする。「無理しなくていいんだよ」
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