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「さあ、せっかく悠介が作ってくれたんだ。食べよう」
「うん。兄ちゃん、ありがとう。いただきます!」
浩介は少し寂しそうに笑ってオムライスを口にした。でも、次の瞬間顔をしかめた。
「うわっ、しょっぱい」
「えっ?マジで?」
俺もオムライスを口に運ぶと、確かに塩を入れすぎていた。
ケーキもカチカチでナイフとフォークを使わないと食べられない状態だし、散々な料理になってしまった。
「ごめんな、浩介」
哀しいことを忘れさせるどころか、酷い誕生日になってしまった。
「やっぱり、お母さんがいない誕生日はダメだね」
浩介の言葉が胸に刺さって、思わず涙が出そうになって下を向いた。
母さんも笑って頷いているような気がした。「無理しなくていいんだよ」
ああ、そうだね、母さんの言う通りだった。無理して頑張った結果、失敗したしわ寄せで浩介を哀しませてしまったんだ。
おもむろに親父が席を立つと、浩介の隣に行って膝をついて浩介の顔を覗き込んだ。
「ごめんな、浩介。父さんはいらんプレゼント買っちまった。けど、兄ちゃんはおまえのことを想って、精一杯やってくれたんだぞ」
親父が少し厳しい口調で諭すように浩介に言ったから、俺はそれにイラついて「いいって、俺が失敗したんだ!」と思わず声を荒げてしまった。
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