無理しなくていいんだよ

9/13
47人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「さあ、せっかく悠介が作ってくれたんだ。食べよう」 「うん。兄ちゃん、ありがとう。いただきます!」  浩介は少し寂しそうに笑ってオムライスを口にした。でも、次の瞬間顔をしかめた。 「うわっ、しょっぱい」 「えっ?マジで?」  俺もオムライスを口に運ぶと、確かに塩を入れすぎていた。  ケーキもカチカチでナイフとフォークを使わないと食べられない状態だし、散々な料理になってしまった。 「ごめんな、浩介」  哀しいことを忘れさせるどころか、酷い誕生日になってしまった。 「やっぱり、お母さんがいない誕生日はダメだね」  浩介の言葉が胸に刺さって、思わず涙が出そうになって下を向いた。  母さんも笑って頷いているような気がした。「無理しなくていいんだよ」  ああ、そうだね、母さんの言う通りだった。無理して頑張った結果、失敗したしわ寄せで浩介を哀しませてしまったんだ。  おもむろに親父が席を立つと、浩介の隣に行って膝をついて浩介の顔を覗き込んだ。 「ごめんな、浩介。父さんはいらんプレゼント買っちまった。けど、兄ちゃんはおまえのことを想って、精一杯やってくれたんだぞ」  親父が少し厳しい口調で諭すように浩介に言ったから、俺はそれにイラついて「いいって、俺が失敗したんだ!」と思わず声を荒げてしまった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!