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年が明けたばかりの、快晴だけれど寒い午後。
この日、あたし望月 希の人生に大きな刺激と困惑を与えるきっかけとなる出来事が、同時に二つも発生した。
お母さんは二日ほど前から仕事始めとなり家には不在で、部屋の中には朝からずっと静かな時間が充満している。
去年のクリスマスにやった短期のアルバイトを最後に見事ニート予備軍となってしまったあたしは、お昼ご飯にとコンビニから買ってきたタマゴサンドを頬張りつつぼんやりと求人情報誌を眺めて時間を潰していた。
高校を卒業してから今日まで、ほとんどの時間をフリーターとして過ごしてきた。
卒業と同時に就職した地元の冷凍食品を扱う工場は、情けなくも二ヶ月で退職。
事務室や休憩所は良いのだけれど、あの作業場を包み込む冷気と言うか異常な低温環境が個人的に耐えられなかった。
「最初はね、皆大変で苦労してるけど。まぁ、一ヶ月もいれば大体慣れるから。平気平気」
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