プロローグ

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そんな上司の言葉を最初は信じていたけれど、とんでもない嘘だった。 毎日手足は感覚がなくなるくらいに冷えるし、お腹はグルグルになるし、トイレだって頻繁になんて行く暇もないし。 土日も仕事だし。 結局、あたしには合わない環境だったのだろう。 辞職を申し出るときは罪悪感ですっごいドキドキしたし、寒さとは別の理由で手も震えた。 それでも、あたしは耐えられない環境から逃げるようにして職場との縁を切ってしまった。 「やっぱり! あんた子供の頃から根性ないから、どうせすぐ辞めると思ってたわ! 二ヶ月もっただけでも予想外! あたし二週間くらいかと予想してたもの」 仕事を辞めて家に帰ったとき、開口一番母親に言われた言葉がこれだった。 昔から楽観的で、落ち込んだり深刻に物事を考えたりしない人だから文句を言われたりはしないだろうなと思ってはいたけれど、まさかここまで笑いのネタみたいに扱われるとは考えてもいなかったので、すごい拍子抜けした気分になったのをはっきり覚えている。
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