7.

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「綾乃!」 ゆっくりと綾乃は振り返る。 私はフェンスの外。 貴方との距離は10メートル程かしら。 この時のために病院長をたらしこみ、屋上ドアの鍵を手に入れておいた。 ペルセウスを待っていた。ずっとずっと。 闇から救い出してくれる私の夫。 何度も人違いをして、その度次のペルセウス候補に始末を付けさせて来たけれど、やっと会えた。 「こっちに来い、綾乃」 何故そんな怖い顔をするの? 私は貴方の笑った顔が好き。イク時のため息が好き。 睨まないで、私の愛しい人。 「お前、殺したな」 「何だそんなこと」 「何でだ。あんなに恋しがってたのに」 「だって、置いていくのはかわいそうだから。 一人ぼっちで、誰もお見舞いすら来てくれないのよ。 それに、死にぞこなって一番悔しかったのは彼女自身だから」 せめて私の手で引導を渡してあげる。 恋しい人の元へ送ってあげる。 「泣きながら言うなよ、そんなに苦しんでるのに」 貴方こそ、そんな顔しないで。 「こっちにおいで。危ない」 「さようなら、愛してた」 「逝くな」 一歩また一歩。 貴方は私に近づいて来る。もう少し。 「危ないから降りるんだ」 また一歩。 手を伸ばしてくる。 「指輪を買った。お前のために。いや俺達の為に。一緒に開けよう」 「見せて」 「こっちに来たら見せてやる」 「足がすくんで動けない」 今度は私が手を伸ばす番。 手の平を上にむけて。誘うように。 ほら。いらっしゃい。 一歩。また一歩。 フェンスを乗り越えて来る。 そして私の手の上に貴方は手を乗せる。 私は貴方の指を握り混み、そのまま後ろに腕を振って指を離す。 数秒後 鈍い音が下から聞こえた。
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