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玄関の開く音が聞こえたときに僕が考えたのは
(ああ……、死体を見られてしまうな)
という、まるで他人事のような冷めたものだった。
リビングには父親が。そして、キッチンには義理の母親がそれぞれどす黒い血を垂れ流しながし、動くことのなくなった肉塊として転がっている。
ほんの二十分程前までは、普通に心臓を動かしていたはずなのに。
普段から腰が痛いと愚痴をこぼしていた父親も、肩凝りが酷いと不機嫌そうな表情ばかり浮かべていた義母も、もはやそんな悩みに苛まれることすらできなくなり、今はただそこにあるだけ。
命と言うのはこうも呆気なく消えるものなのだなと、そんなことを思いながら突っ立っていると、
「……ただいま」
聞き慣れた声と共に、義妹がリビングのドアを開け姿を見せた。
旧姓は古河 若菜(こがわ わかな)。
十年前に義母が連れてきた、二歳年下の十九歳。
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