王子様とボク

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 一五XX年、ある秋の日の午後、リヨンドーンの街はさながらお祭りのような騒ぎだった。 「王子様がお生まれになられたぞーっ!」  待望の王子様誕生のニュースは、瞬く間に街中を駆け巡った。  そんな中、それを快く思わない者も、ここに一人いた。 「けっ! なにが王子様がお生まれ、だ! うちはとんだ貧乏くじを引いたというのに──面白くもねェ!」 「また昼真っから酔っ払ってるんですか? 働きもせず、いい大人が」 「うるせー!」  男は酒瓶を片手に、今日も街の中をフラフラさまよい、くだをまいていた。  住所不定、無職、妻あり──子供は先刻授かったばかり。  奇しくも、王子様が生まれた同じ日、酔っ払い亭主の子、という不名誉な呼び名の赤ん坊が同時刻に生を受けた。  その名は、タム・キャリー。  二人は同じ日に、別々の場所で生まれ、互いに顔も知らずスクスクと育っていった。
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