第1章

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艶めくチョコクリームのような輝き…一度鼻についたら頭に焼きついて忘れられないぐらいに高い芳香。 私は毎日、アレの誕生を楽しみに待っている。 自分の生み出したキャラクターの誕生日を設定しても、実際にそれを祝う作者は少ない。 作者はどれだけ自分の作品に愛着を持てるか、そんなこともまた指針のひとつになると思うのだが…そんな私はおかしいだろうか? 虚構と現実は違うが虚構が入り交じれば灰色の現実に七色の色がつく。 しかし、毎日キャラクターを生み出せる才能の持ち主などいない。 いたとしても、それはもはや人外の領域だろう。 それだけ創作という概念は、人間に存在を生み出す喜びを与え…生存競争にて高みに潰される分身が去っていく苦痛を与えるもの。 生命と存在の誕生とは、あらゆる生命に根源的に備わっている祝福であり希望なのだ。 誕生日とはそれを再確認し、魂の喜びを改め刻むもの。 日々、人間が身体から出すアレだって長い歴史を支えてきた万人共通にも近い多くの人間の笑いを誘うブラックユーモアの種だ。 人間の生命活動の証であり、また体内の有毒成分を排出させるために必要な存在である。 ゆえに、私は常にアレを尊敬しよう…時にすべての人間に不快感をも与え…爽快感をも与えるアレを! 私はアレに魂を与えることにした。 儚くも水に流される運命なれど…ほんの一時だけでも自分から生まれ落ちた存在。 彼らが存在する限り…私は毎日のように存在を生む喜びを知ることが出来る。 ゆえに、愛しく思わねば…そう思わないかい? さぁ、妄想の始まりだ。 まず、妄想の栄養分とするためにはアレについての知識を蓄えなくてはならない。 そもそも、アレは多くの子供の絵本の題材として取り上げられており…下手な芸能人以上に知名度が高い創作界の神である。 だのに、子供が成長するやその存在は敬遠され…創作界において話題に登り題材にされる確率が一気に低下する。 同じ地上に生まれ落ちたひとつの存在なのに、ひどい扱いだ。 生命の根源的な祝福をもっとも尊重する人類という種にありながら、我らが不始末が情けなくて思い浮かべるだけで涙がこぼれる。
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