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結局それから「付き合う」「付き合わない」の押し問答を続けて、結局凪が承諾を得ることは叶わなかった。
「蒼先生、俺のこと嫌い?」
「き、嫌いってわけじゃない」
「じゃあなんならいいの。どんなことなら、俺を特別扱いしてくれる?」
「さっきからそればっかで埓があかないだろっ」
「一つくらい答えくんないと、ここから帰さねえから」
頭の片隅では、教師の脅迫なんて学校側にばれたら退学ものだと凪は思っていた。しかし平常を失っている蒼は「うう……」と小さく唸りながら、根負けして口を開く。
「こ、交換日記」
やけにレトロな響きのそれに、凪の思考回路は完全にフリーズした。
作文の練習代わりだとか、漢字を覚えるためだとか、およそ小学生に向けるような言葉を蒼は驚異的な早口で口走ったのだった。
購買で手に入れた水色のキャンパスノート。6月の梅雨入りと同時に、神谷蒼と千代田凪の交換日記が始まった。
凪は罫線が並ぶ1ページ目に、シャープペンシルを走らせる。
「とりあえず、自己紹介でもどうぞ」
Spring(has come) 終
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