ギャンブル町

1/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

ギャンブル町

 「よっしゃ! 大穴ゲット!」  エス氏は地元が発行している新聞のお悔やみ欄を見た瞬間に、歓喜の雄叫びをあげた。  高齢化が進む町で唯一100歳を超えているY蔵さんに誰もが賭けていた。オッズが低くても、危篤説が流れてしまった以上、それが自然な流れだった。  しかしエス氏はあえて働き盛りのM男さんを狙っていたのだった。郵便物を配達した時に覇気がなく、その数日後、精神科に入っていくのを自分の目で確認したからだった。  郵便局に勤めているエス氏は、郵便物を配達しつつ、町民の情報を常にノートに書き記してきた。休みともなれば町を散策し、町民たちの井戸端会議に首を突っ込み、生の情報を拾い集めた。ネット上にある町の匿名掲示板はエス氏が立てたものである。これらのデータと経験や勘がはじき出したのがM男さんの死だったのだ。うつ病からの自殺である。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!