27(承前)

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 テルがいう。 「お調子者のおまえが、そんなにびびるほど怖い夢なのか」  クニは震えて自分の身体を抱いた。 「ああ、一番恐ろしいのは、夢なのか現実なのか完璧にわからなくなることなんだ。おれたちの夢って、普通はどんなにリアルでも夢のなかで気づいているよな。こいつは夢だって。なんていうか、あの青いカプセルのむと、夢だか現実だか、まるでわからないんだ」  クニが自分の手をうえにあげて、天井から降るダウンライトの明かりに透かした。 「正直にいうと、おれが見ているこの世界は、おれの夢なんじゃないかと、今この瞬間にも疑っているんだよ。起きているあいだ中、こいつは夢が現実かって、頭のなかで考え続けるのは、ものすごい疲れるんだぞ」  身震いを止めないクニを見て、タツオにまで恐怖の震えが伝染しそうになった。夢と現実の境界を壊す新薬か。国家間の総力戦は、ここでも恐ろしいテクノロジーを生みだしていた。
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