恋するために、東京に行きます

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恋するために、東京に行きます

「うおおおお~ん」 朝の7時を告げるサイレンが、鳴り響く。 私は、サイレンから逃れるように、布団を頭から被った。 休日ですら、寝坊を許さないこの街に、この時ばかりは、殺意を覚える。 関東の端の端。農業と林業と年寄で成り立つ町に私は住んでいる。 自分が生まれ育った町とはいえ、無条件で愛する事などできない。 休日のサイレンには、本気で腹が立つし、どうにかしてよと毎週思う。 そして、どうにもならないまま、1週間が過ぎる。 その繰り返しで、簡単に1年が過ぎる。 サイレンの後には、ハウリングしまくりのアナウンスが流れる。遅れて聞こえる声にかき消されて、言葉を聞き取れない。おそらく、週末に行われるイベントや行事についての連絡だと思われるが、ちょっと、何言っているのか分からない。 まるで、下手くそな腹話術を聞かされている気分になる。 でも、この街の人たちは、きっと、そういうものだと受け入れていて、このサイレンとアナウンスに怒っている人はいない。話題にもならない。 きっと、田舎に住むということは、そういう事なんだろう。 少しづつ、いろんなものを諦めて、受け入れて、おおらかでいる事に慣れていく。     
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