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自室のある2階から、1階のリビングへ降りるとテーブルへはつかずに居間へ向かった。
居間には小さな仏壇が置いてあり、遺影が2つ並んでいる。
俺は蝋燭に火をつけると線香を立てた。おりんを1度鳴らし、両手を合わせる。
それからゆっくりと目を開き、遺影を見た。
……父さん、母さん。
守れなくてごめん。その代わり、俺は沙彩の事を一生かけて守るから……
心の中でそう話しかけ、蝋燭の火を消した。
「今日はねー、お兄ちゃんの好きなハンバーグだよ」
「サンキュ」
――父さん。
そう呼んだのは、きっと数える程しかない。
中1の時に母さんが再婚をして、俺の父さんでいたのは実質2ヶ月程度だったから。
沙彩は当時小6だった。母親は男を作り離婚届を置いて失踪したそうだ。
家族の絆を深める為、と計画された旅行が、家族を引き裂くことになるなんて誰が想像しただろうか。
あれから7年の時が過ぎた。
俺は20歳になり、これまで暮らしていた施設を出た。
そして、両親が残してくれていたこの家へ帰ってきた。沙彩を連れて。
最初こそよそよそしかった沙彩も、この半年でかなり打ち解けてくれた。2人しか居ない家族だから。
「お、美味いな。腕あげた?」
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