コーヒーの魔力

2/28
58人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
「結衣、おはよ」 翌朝、登校するやいなや、栄太は私に爽やかに挨拶をして来た。 「お、おはよう」 私もかろうじて挨拶を返したものの、周りの女子視線が痛かった。 そう、栄太はモテるのだ。 私と別れた後、何人かに告白されたらしい、というのを噂で聞いた。 端正な顔立ちをしているし、勉強もスポーツもそつなくこなすし、何より優しい。 今となって考えれば、どうして私なんかと付き合っていたのかわからない。 そしてそれらの告白を全て断ったというから驚きだ。 ますます栄太はどこか謎な男だ。 そんな栄太が別れたはずの彼女に自ら挨拶する。 当然、面白くないと感じる人もいるだろう。 私はどうかこれ以上嫌われませんように、とこっそり願った。 今更好かれたいとは思わないけど、これ以上クラスで肩身の狭い思いをするのは嫌なのだ。 しかし、私の心境など知る由もなく、栄太は何かにつけて私に話しかけてくるようになった。 勿論、クラスでほとんど話し相手がいない私にとっては嬉しかった。 嬉しかった、のだけどー
/161ページ

最初のコメントを投稿しよう!