58人が本棚に入れています
本棚に追加
/161ページ
「結衣、おはよ」
翌朝、登校するやいなや、栄太は私に爽やかに挨拶をして来た。
「お、おはよう」
私もかろうじて挨拶を返したものの、周りの女子視線が痛かった。
そう、栄太はモテるのだ。
私と別れた後、何人かに告白されたらしい、というのを噂で聞いた。
端正な顔立ちをしているし、勉強もスポーツもそつなくこなすし、何より優しい。
今となって考えれば、どうして私なんかと付き合っていたのかわからない。
そしてそれらの告白を全て断ったというから驚きだ。
ますます栄太はどこか謎な男だ。
そんな栄太が別れたはずの彼女に自ら挨拶する。
当然、面白くないと感じる人もいるだろう。
私はどうかこれ以上嫌われませんように、とこっそり願った。
今更好かれたいとは思わないけど、これ以上クラスで肩身の狭い思いをするのは嫌なのだ。
しかし、私の心境など知る由もなく、栄太は何かにつけて私に話しかけてくるようになった。
勿論、クラスでほとんど話し相手がいない私にとっては嬉しかった。
嬉しかった、のだけどー
最初のコメントを投稿しよう!