【1】終焉の日

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【1】  嗚呼、こうやって歴史の終わりは訪れるのんだと僕は漠然と思っていた。  見上げた空には赤い月。  昼間だというのにくっきりと浮かんだそれは地球と付かず離れずの距離をとっていたあの月ではなく、長きに渡る漂流生活に終わりを告げようとしている彗星らしい。  なん億分の一、宝くじを当てての億万長者生活を何度か繰り返すよりも遥かに稀有な経験を僕たち地球号に乗る人類は獲得しようとしていた。  最初はささやかな噂レベルだった。  何処かのインターネット掲示板に「惑星が追突するかもしれない!」なんて書き込みがあって、「自転車のチューブ買い占めるわ笑」みたいな、まぁ、いつも通り「終末」に胸膨らませつつも、そんな現実はやってこないと誰もが思っていた。  真実味がましたのはやけにテレビで宇宙戦争だの氷河期到来物だの、地球が滅亡へと向かう系の映画を流すようになってからで。その後に及んでも多くの人はなんら関心を寄せていなかったし、遂にテレビ局が迷走を極めたと笑っていたれた。  フィクションが現実となったのはそんな話もあったかと忘れ去られようとしていた頃だ。  突然内閣府からのお知らせという名目でテレビ放送が始まり、この日に限っては全局、どのチャンネルを回しても同じ映像だった。  一局だけ総理大臣をワイプで映しながら料理番組を流していたけど、やがてそんな事をきにする余裕もなくなった。  明日、地球は滅びます。
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