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俺の声に、危機感を感じたのか慶松が俺を抱えて風呂場に運んでくれた。
「ごめん、少し調子に乗った」
慌てて慶松が、中から出してくれた。でも、気持ち悪さと、今度は腹痛がやってきた。鈍い鈍痛で、脂汗が出てくる。
慶松は丁寧に体を洗ってくれると、バスタオルに包み、再びベッドに運んでくれた。
「ごめん、氷花」
痛みに丸まっていると、慶松が首や耳にキスしながら抱き込んできた。
「ごめんな……」
今度は、唇にキスをする。幾度もキスをしていると、次第に緊張がほぐれてきた。
「俺、身長が百八十近くあるよ」
よく、抱えて階段を登り降りするものだ。
「……そうだね、体力があって良かった」
体力ではなく、筋力であろう。俺が落ち着くのを待って、慶松は続きをせずに仕事に戻っていた。
やはり、ここはデリケートで危険な場所であった。出来る事なら、物など嫌だ、慶松以外は入れたくない。
俺は落ち付くと、組み立てをしている仕事場に行ってみた。
「大丈夫か?ごめんな氷花」
俺は首を振って、パーツの注文を確認する。
「ここって、無理できないね」
こうやって、互いに経験を積んでゆくしかない。
「そうだね」
プロの技を使用されて堕ちてしまった木村や、徐々に始まり逃れられなくなった石田、熱々カップルのような孝弘だがもうすぐ嫁が出産など、あれこれ抱えて生きている。
俺はこれから、どうなってゆくのかは分からない。でも、暫くは慶松と一緒に過ごしてゆきたい。
『BACK‐END』了
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