暗黒少女の涙

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「さて、尻尾を出してくれて助かりましたよ。」 テトラはそう言いつつ兵士達の背後から二人に声をかける。 シェーザが鋼壁から注意をそらさず、テリーがそんなテトラに応答する。 「ま、慣れないことはするもんじゃねぇよな。」 「そうですね。慣れないことをするのは不安定なことをするのと同義、よっぽどの自信がなければするものじゃないかと思いますね。」 そういってテトラはクスクスと笑う。 苛立ちを覚えるが、そんなものを感じてる余裕もない。 テリーはチラリとユルカの袋を見る。 テトラはそんなテリーの小さな動きを見逃さなかった。 「そちらの袋、よっぽど大事なものを詰めているようですね。」 「........。」 「どうです?ソレをこちらに渡せばとりあえず命の保障はしておきますよ?」 そういって手を差し出し、こちらに寄越せと意思表示するテトラ。 しかしテリーはそんなテトラの行動を鼻で笑う。 「ハッ。悪いが俺は質の悪い傭兵じゃなくてね。金で人殺してるわけじゃないんだよ。」 「ふむ?それなら何故傭兵を?」 「悪いが胡散臭い奴に教える気なんてしないね。」 そういって舌を出し挑発するテリー。 そんなテリーを見ていくらか余裕ができたのか、シェーザも視線は外さないままニヤリと笑う。 そんな二人が気に障ったのか、テトラは不機嫌を隠すことなく表情に出す。 「....気に喰わないですが、これ以上交渉の余地はないようですね。」 「さぁ?条件次第かもよ?」 「いえ、誇りを持った傭兵は絶対に依頼主を裏切らないと聞きます。ならば私たちが取る行動は___」 そういってテトラは手を挙げる。 それに反応するように周囲の黒鎧たちが武器を構え陣形を取る。 「シェーザ、ユルカは任せろ。」 「....どうしろと?」 「都合がいいかもしれんが、【本気】出してくれないか?」 「....良いけど、その後は?」 「増援が来るまでに離脱。そんであいつらと合流。」 「....了解。」 テリーの言葉に、団員として従順なシェーザにしては珍しく渋い様子で立ち上がる。 テリーは心底申し訳なさそうにしながら、シェーザからユルカが入った麻袋を受け取ると入れ替わるように鋼壁を睨む。 ゆっくり、しかし確実に自分からテトラへと向かうシェーザにテトラも怪訝な表情を浮かべる。
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