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その日病院から連絡を受けた俺は、すぐさま会社から飛び出した。
多分病室に集まったヤツらは、遺産のことばかりをまだ生きている爺さんの隣でヒソヒソと話しているに違いない。
俺は地下鉄の階段を駆け降りると、電光掲示板に目をやった。
次の電車の発車時刻は5分後。腕時計に目をやり、やはりタクシーにすれば良かったかと苛立たしく舌打ちをした。
「随分急いでるんですね」
すぐ脇から声がしてそちらに顔を向けると、その声の主の目は真っ直ぐに俺を捉えていた。
瞳孔の輪郭すらも分からないような漆黒の瞳。まるで猫みたいだ、そんな印象を俺に与えた。
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