ごっこさん

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わたしは、また今日も柊碧人と帰る約束をしていた。 今日は日直だから、少し待っててと言われて、まだ自分の教室に席に座っていた。 人のいる教室と、誰もいない教室の空気は明らかに違う。重圧がなく、軽い。解き放たれたような気持ちになる。 「美優さん。帰ろう」 廊下から柊碧人が教室をのぞきこみ、わたしを呼んだ。 「うん」 廊下へ出るなり「手、繋ごっか」と、柊碧人は言った。 「嫌だよ」 「校舎の中だけでいいよ」 「普通、逆じゃない?」 「外だったら、いいってこと?」 「許可してない」と言うのに、学食の中にいるときと同様に、あっさり手に触れて繋いだ。 すれ違う同級生の視線が嫌で、俯いてしまう。 柊碧人は只でさえ目立つのに、こんなところで手を繋ぐなんて、交際を主張しているように見えて嫌だった。 階段を下りようとすると「あ、武山先輩」と、柊碧人はわたしに囁くように言った。
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