第一話 週末の桜 謙治

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第一話 週末の桜 謙治

とある五階建ての団地があった。その最上階の一室に父と息子が住んでいた。これはその息子を中心とした物語です。 ※※※※※ 新鮮な野菜が手に入ったので、水洗いしてからまな板の上でそれらを包丁で切る。ザクザクと切られる音がして口に入る程度に細かくなる。同じく切ったウインナーと一緒にフライパンで炒めて調味料で味を付ける。そして茹でておいたパスタと和える。作り方はシンプルそのものであるがこれがけっこう美味いのだ。 桜 御影(さくら・みかげ)。彼はこの街でも有数のレストランの厨房で働いていた元コックである。元というのはいろいろな出来事があって彼は現在失業中の身の上であったからだ。 彼は壁に掛けられた時計を見て時間を確認する。針は午後12時45分を指していた。そろそろだな、と彼は思った。彼には一人の息子がいる。今日は土曜日なので学校の授業はお昼までだ。彼は自身と息子のための昼食を作っていたのだった。 「ただいまー」 挨拶の声と同時にドアが開いた。 「おかえり」 息子は名前を謙治(けんじ)といった。 「今日はな、新鮮な野菜が手に入ったんや。昼食はパスタにした」 「ほんま」 謙治の表情に笑みがこぼれた。
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