契約

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契約

「ん……」  私は、ふと意識が戻った。ありえないことだ。さっき神狼に背中を貫かれて死んだはずなのに。  そう思って恐る恐る目を開けると、一番初めに目に飛び込んできたのは〈白〉だった。  不思議に思い、起き上がって周りを見回すと、そこには何もない真っ白な空間がどこまでも広がっていた。 「ここはどこだろ……天国かな?」  気付くと私の頬を涙が伝っていた。  溢れ出して来る涙を必死に抑えようとするが、意思に反して涙は勢いを増すばかりだ。  私はひどい自己嫌悪に襲われていた。  あの時??神狼に遭遇した時、私の中を愚考が支配していた。大樹の森で敵なしだった私は、いつの間にか自分が強くなり、この森では負けることはないのではないかという錯覚に陥り、あわよくば神狼にさえ勝ててしまうのではないかと思っていたのだ。  冷静になってよく考えてみれば、伝説の存在に私のような一人間が敵うわけがない。  私は、こうしていつも物事に対して結果が出てしまってから、やってしまったことを後悔する。  まさか、それが死という結果になってしまうとは……浅はかだった。     
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