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京浜魑魅魍魎〈チミモウリョウ〉地区
違法廃棄のセダンの亡骸
月の無い夜も光るよ
倉庫街は人工の孤島
灯りのゆきわたらないバスの後部座席には
桃色のサンダルをはいた
小さな二本の足だけが揺れて見えるよ
知っている
真夏の昼には焼けたタイヤのにおいがする場所
現在・春朦朧〈モウロウ〉
こんなところに桜、桜
夜桜に心が酔うのは何故だろう
バスは緩やかに空に軌道を乗せて
運転手不在のまま走り続ける
気付いたら
生きていない
呼吸も鼓動もしていない
さぁ?
もしかすると
もうずっと前からだったんじゃないの?
知りたかったコトは知ってしまうと白々しく
やりたかったコトはやってしまうとママゴト遊びのよう
恐ろしいのは明日死ぬ夢よりも
明日生きてしまうという現〈ウツツ〉
数億年前に息絶えた星の光が
今 地球に届いている
だからあれは星の幽霊なんだよ
さようなら
私を愛した人
私もまた 過去
既に実体は果てた
幽霊
2008年4月6日
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