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『君たちはカナエビトがいると思う?』
声が響く。
少女がそれに気付き、くるりと振り向くと黒い髪の青年がにこりと笑い立ち尽くしている。
『…誰?』
見ればいきなり話しかけてきた細身の青年は長い髪を三つ編みにまとめ、自身の左肩から前に垂らしている。
チェックが重なるケープには緑色のリボンがあしらわれ…膝を隠すパンツに茶色いブーツ。
人形の様に整う顔は男性の様にも見えるが…女性の様にも見える中世的な顔を見せる。
青年は、変わらない微笑で少年少女の姿を空色の瞳で見下ろしていた。
『わたしね、カナエビトのお話を知ってるんだ…君たちが信じるのなら、教えてあげようか』
いきなり声を掛ける見知らぬ人に警戒を露にはしたが…煉瓦の道を華やかに彩る噴水淵に腰をかけた青年の放つ不思議な魅力。
少年少女はひきつけられる様…青年の周りに集まった。
『…じゃあ、君たちにはこれから、カナエビトに願いを叶えてもらったとある少女のお話を聞かせてあげる』
***
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