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そういいながらも、難波の表情はゆるゆるだった。
糠に釘、暖簾に腕押しとはこのことだ。
「成瀬、この企画書よく出来てた。今回はこの案でいく。次の会議でプレゼンだ」
杉崎が難波との間に割って入ってくる。
あからさまなその行動に成瀬は内心吹き出した。
思えば、彼の行動の端々にそんな感情が見え隠れしたいたかもしれない。
あの頃はそんな余裕もなにもなかったのだが。
「分かりました。この企画、通ったんですね。よかった」
「プレゼンは俺と一緒にやるぞ」
杉崎に企画書で頭をポンと叩かれた。
そんな小さな行動さえ今は面映ゆく思えてしまう。
ほんの少し前までは、噛みつく勢いで拒絶していたはずなのに。
そう思うと、あまりにもあっさり手の平を返した自分が妙に恥ずかしい。
「どうした?」
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