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「なあ?これから俺も大学入って就職したらさ。もう先輩も後輩もねぇじゃん。」
「どういうこと?」
「だから、もしかしたら俺の方が先に出世するかもしんねぇし。仮に同じ会社にいたら、あんた俺の部下になるかもしれない。」
「すごい自信ね。」
随分、飛躍した話ではあるけれどーーーまぁ、無くもないかと微笑ましく聞いていたのに…
「そう思わなきゃ、やってらんねぇょ。」
掠れる声で彼が言った。
「えっ……。」
「ひでぇ話だよ。たった一週間の差だけで、俺は頼りないいつまでたっても年下の彼氏って訳。」
「どういことよ?」
「やっぱ、気になんだよ。あんたの周りには俺よりも年上のしっかりしたやつらがいくらでもいるわけだろ?当然、このままだと俺より先に社会人にもなるだろうし。そうすると社会経験豊富なやつがさいくらでもいるし…とか考えると俺がいくらがんばったってって思うわけよ。いつまでたっても歳だけは追いつけねぇじゃん。」
彼の言葉をゆっくりなぞり頭で理解する。
「つまりーーー、自分が年下だってこと気にしてるの?」
「そお、だけど?」
なぁんだ。結局、私達は似た者同士か。
二人して同じ事で悩んでたなんてバカみたいだね。
その時、春の穏やかな微風が私達の頬をかすめていった。それはまるでいつまでも抱き合ってる私達を冷やかすかのように。
「ねぇ、私、お団子食べたい!」
「な、なんだよ、いきなり……ガキみてぇだな。」
と、言いながら漸く私の体を解放する彼。
目の前の彼をちゃんと見る。
そこには確かに私の好きな人がいた。
「いいじゃん、ガキでも年上でも、花見と言えば団子なの!」
「何だよ、それ」
と、言いながら優しい顔で私の手を自然に取る彼。
もう、どっちだっていい。歳が上だろうが下だろうが。こうして手を取り合って歩けばそんなこと関係ない。
時には私が彼を引っ張り、また違う時には彼に引っ張られ、互いにフォローしあって足りないところは補い合って行けばいいんだと思う。
二人が行く、この道が永遠に続くことを願って……。
また、微風がふわっと吹き沢山の桜の花びらを散らせた。
ふぅわり、ふぅわりと。
桜の花びらが私たちの未来にエールをくれた気がした。
終
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