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「うん。こっち、もうすぐ始まるのに、そんなにお客さんいない」
「朝だからじゃない? こっちはカップルばっかり」
呆れながら調子で返せば、少し遅れて返信。
「ごめんね、ちゃんとそばに居れたらいいのに」
それを見て、心臓が萎縮するのを感じた。せっかくのデートなのに、落ち込ませては元も子もない。
「お前のせいじゃないよ。俺こそ、傍に居てやれなくてごめんな」
「いや、忙しいしお互いさまじゃん」
「そんなことないよ。俺なんか暇なもんだって」
「でも、いっつも遅くまで仕事してるみたいだし」
「もう慣れたもんだよ。それに、今後のために働いてるんだから、苦でもないし」
そう送った途端、また少し返信が遅れる。
「今後のため?」
たった一言だけ。
ふっと口元を緩めながら、返信した。
「いつかお前と一緒に暮らすためにね」
彼がそれをどう思うのか、内心ひやひやしてはいたけれど、返信を待った。
文字で届くと思っていた返事は、電話の着信に変わった。
「もしもし?」
予想外だった。声を潜めて電話に出る。彼の声が、ぐずぐずと緩んでいるのがわかった。
「……ありがとなぁ」
心臓がまた自己主張するように強く動いた。
「いや、お礼言われるようなことなんか……」
「ごめん、困らせるようなこと言って」
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