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翌日久しぶりに早起きした彼は、映画館の入り口で一人、伸びをした。
周りはカップルばかり。そういえば、今日はカップル限定割引の日だった気がする。
仲睦まじくそれぞれの世界を築いている様子を横目に、彼はチケット売り場に並んだ。前に居るのも、すぐ後ろに並んだのも、やっぱりカップルだった。
ポケットが震える。手を当てると、スマホがぐいぐいと動いていた。
「おはよ、もう映画館ついた?」
恋人からのたった一言のメッセージ。
途端、自分の隣に誰かいるような気がして、心がほんわか暖かくなるのを感じた。
「うん、今チケット買うのに並んでるとこ」
すぐに返信して、返事を待つ。
彼の順番が来た。あらかじめ鞄から出した財布を広げ、ついでに崩そうと思っていた五千円札を出す。
「10時半からの、一枚」
一枚と聞いて、ガラス越しのスタッフが不思議そうな笑顔を向けてきた。余計なお世話だと思いながら、にこりと返すに留める。
そんなやり取りをしているうちに、着信があった。
「俺もチケット買った! もうすぐだね、楽しみ!」
時間を確認する。只今十時。
「そろそろ、席に座ってる?」
返信すると、即座に答えが返ってきた。
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