帰ってきた飛ばしやK。

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大須観音。いつ来てもここは…。おそらく寺社建築なのだろうが、この色は何なのだろう。 赤い塗料を塗っているのだけど、品が無いというかなんというか…。 ここには鳩が群生している。こいつらは平和の象徴といわれる資格はない。餌を持っているひとを見つけようものなら、たちまちよってたかって襲い掛かり、くちばしでその人の手を穴だらけにせんと突きまくるのだ。 地元の人間は、そんなこと百も承知なので、餌やりなど絶対にやらないのだが、それを知らない観光客が餌を手にして、彼らの餌食になっている。 それでも、ここはちょっとした観光地になっていて、聞こえてくる言葉の半分以上は日本語以外のアジア系の言葉である。 そこへ、群生する鳩達をかき分けるようにして一人の男がやってきた。 彼の名は水沢健二。28歳。東京で短距離のアスリートとして走りつづけていたが、選手活動をあきらめ、実家のある大須へと帰って来たのだった
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