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あれは私が高校を卒業した、お祝いの夜ことでした。
今でもハッキリ覚えてる。
貴方はお酒、私はノンアルコールビールで乾杯、屋根に上がって2人きり、今夜みたいな夜空をね、隣り合って見上げてた。
いつからだったっけ?
私達、記念日はそうやって過ごすのがキマリでしたね。
貴方は本当に突然、私に別れを告げました。
『傭兵になる。元気でな』
たったそれだけ。
あまりに酷すぎやしませんか?
次の朝、いつも寝坊の貴方を起こしに行ったら、貴方の部屋はもぬけの殻、もう行ってしまった後だった。
おじさんのかつての隊の友達を問い詰めて、派遣会社を見つけ出し、散々抗議して…
私があんまりシツコイからって、やっと貴方、戦地を変わるときにだけ、連絡をくれるようになりました。
行き先だけが書かれている、たった3行だけのその土地の写真入りの絵葉書。
今の私は、それだけを心待ちにしています。
ねえおじさん。
お腹は空いてないですか?
寝坊して叱られてはいませんか?
砂漠の星は…美しいですか?
おじさんが無事な姿で、澄みわたる砂漠の夜空を。
あの優しい眼差しで見上げいることを、私は願って止みません。
それだけで私は…
ううん、これは嘘。
本当は、やっぱり戻ってきて欲しい。
本物の貴方に触れたいよ。
ハルキおじさんまでが、小さな金属片に書かれた名前だけで戻ってきたなら、私は一体どうしたらいい?
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